シング ア ソング
2007年 10月 30日
こういう「カラオケスナック」の形態を保って営業している店は、銀河系では珍しくなった。
「雑踏が煩わしく、虫の音では物足りない」。定期的に訪れるそんな夜に、私はカラオケスナックを訪れる。どこの誰とも知らない人間が、それぞれのスター像を自分に憑依させて気持ちよさげに歌う姿は、場末のバーや騒がしい呑み屋よりも、より確実な「非日常」を与えてくれるからだ。
この日、ステージに上がっていたのはどうも人間ではないようだったが、歌っていたのはキッズウォー暦30XX年代に大流行した往年の名曲、「数学じゃないのよ恋は」だった。
つい先日、クメハヅラ星のオグラモヅラ教授が発表した、「インド式数学における、記念日SEXの費用対効果」という論文が注目を集めているようだが、たとえ何千年が過ぎ、どれほど科学の進歩が我々の想像を超越しようとも、人間の心模様まで数字で解析しようなどとは思い上がりも甚だしいと私は思う。
実に爽快な、いい歌いっぷりだった。惜しみない拍手を送る私に、少しだけ等身大の現実に戻った彼女は、照れながら店の奥へ消えていった。
by lofibox2
| 2007-10-30 00:10
| PSU